人の習慣を覗き見【天才たちの日課 女性編】

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以前書いたページで紹介した『天才たちの日課』の続編です。副題は「自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常」です。

この本は作家や画家、音楽家などの習慣や癖が紹介されていますが、前作では女性の割合が17%以下になっていてバランスが悪かったということを気にして、今作が書かれたようです。

前作では1日の活動パターンがメインに書かれていましたが、今作では規則正しい生活をしていなかったり、決まりきったルーティンに従うことが好きではない人たちも含まれています。また、前作では一人ひとりの内容が割と淡白にまとめられていたのに対し、今作では一人あたりの文章量が少し長くなっている印象です。

個人的には「何時に起きて、何時から仕事を始めて…」みたいな1日の活動パターンを見るのが好きだったので、今作はそれが少なくて少し残念でした。ただ、自営業として仕事をしている私にとっては、共感できたり参考になることがたくさん含まれていたので、読んでよかったです。このページではそういった部分を引用して、一言二言書いていきます。

「いちばん大事なのは、書きたくても書きたくなくてもとにかく毎日書くことだ」(Kindle 位置No.294)

毎日やっていることをやらないと、違和感があって気持ち悪く感じたりします。気分が乗らない日でも始めてみると集中できることもあります。長期的に続けていくためには習慣化することは大事です。

ただ、こうした習慣は人によっては「諸刃の剣」であったりします。習慣が義務化したり、厳密に実行しなければならないと感じたりすると、ただただ苦しくなっていく場合もあります。私のように、計画通りに実行しなければならないという完璧主義的な傾向がある場合には、少し柔軟に捉えたほうがいいのかもしれません。

『作家になりたいのなら「五、六人の作家の生き方をよく観察して、その人たちがやっていることを参考にするのがいい」』(Kindle 位置No.295)

ただしそれは、その人たちのまねをするためではなく、自分にとっていいやり方を見つけるためであると言います。

他の人たちの生き方や習慣を知ることは、選択肢のひとつとなります。その中から実行してみて自分に合うものを見つければいいということでしょう。

自分に合うかどうかは、その仕事の内容ややり方にもよると思いますが、それは時間経過によって変化するものだと思います。上述した諸刃の剣で自分を傷つけないためにも、そうした変化に合わせて習慣も変化させていく必要があるのかもしれません。

「そう、大切なのは規律を守ること。とにかく仕事をやり続ける。そうしたら突然、なにかが湧いてくる」(Kindle 位置No.386)

なにかを続けていれば、結果においても感情的な面においても「悪いとき」は来ます。それでも続けることによって、新しいアイデアが生まれたり感情的な変化が起きたりして、仕事をやり続けられる、という解釈でしょうか。

そもそも、新しいアイデアや問題点などはネガティブな感情のときに気がつきやすいと思うので、「悪いとき」がくるたびにやめていたら成長しないですよね。

「仕事をすること以外はなにもかも取るに足りないつまらないことに思える。こんなふうに考えると、人生は美しいかもしれない」(Kindle 位置No.1300)

芸術家の言葉はいろいろな解釈ができるので面白いですが、悩ましくもあります。この文章を書いたマリ・バシュキルツェフは「仕事をせずに過ごした日はすさまじい後悔に襲われる」とあるので、私なりに解釈すると「仕事がもっとも楽しいことであれば、仕事をしない日はないので後悔に襲われることはない。人生も楽しいものになる」ということでしょうか。仕事はつまらないものだという皮肉に見えなくもないですが…。

「退屈は、そのとき自分がやっていることがなんであれ、適切ではないと教えてくれている」(Kindle 位置No.1766)

退屈の原因のひとつが、自分が行っていることの結果が驚きやワクワクするものではないことを知っているためであると考えると、「適切ではないと教えてくれている」という表現はピッタリと当てはまります。

ただし、「退屈」と単純に「やりたくない」というのを混同するとややこしくなるので注意が必要です。

「壁にぶつからないために大事なのは、それを心配しないようにすることだと気がついたの。絶対に心配しちゃだめ」(Kindle 位置No.1874)

「病気ではないのに病気かもしれないと思っていると、本当に病気になる」「発作が起こるかもしれないと思っていると、本当に発作が起こる」みたいなものですね。頭で考えたことって意外と身体に表れてきたりします。右手に意識を集中すると右手の温度が上昇してくるみたいな感じで。

スランプなんかも同じで、スランプになるかもしれないと思うだけで、行動や思考パターンがスランプを作り出す状態になるのだと思います。

「芸術作品を実際に作るのは難しくない。難しいのは、それを作るのに適した状態になることだ」(Kindle 位置No.2610)

「彫刻家のブランクーシの言葉を言い換えたフレーズ」となっていたので調べてみると、「制作そのものではなく、制作する状態に自分を保つことのほうが難しいものです」というフレーズを発見。既に頭の中で作品のイメージができあがっていて、それを具現化させるための作業を「制作」と言っているように思います。

適した状態に自分を保つというのは、仕事全般に当てはまるかもしれません。会社勤めであれば、スーツや制服に着替えたり、通勤で電車や車に乗ったり、そもそも仕事をする場所が自宅ではないので自然と仕事モードに切り替わっていきます。しかし、自宅で仕事をするとなると、この切り替えが意外と難しかったりするので、仕事に入る前や仕事中のルーティン作業が重要になります。それがこの本のテーマのひとつでもあると思いますが…。

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