株式投資の総合的教科書【株で富を築くバフェットの法則】

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これまでウォーレン・バフェットに関する本は「ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ」しか読んだことがありませんでした。この本からは多くのことを学べますし、バフェットの銘柄選択に関する考え方には変化があったことも読み取れるので、これはこれで面白かったです。ただし、内容のほとんどがケーススタディになっているので、バフェットの考え方をもっと俯瞰的に知りたいと思い選んだのが、「株で富を築くバフェットの法則」でした。

読んでみた感想としては、これまで私が読んできた株式投資に関する本の総まとめ的な内容になっているので、先にこの本を読んでおけばよかったという後悔のような気持ちが少しあります。読みやすいしわかりやすいし、読んでいてとても面白かったです。

中でも「第2章 バフェット流投資の原点」は、ベンジャミン・グレアムの考え方とフィリップ・フィッシャーの考え方、そしてチャーリー・マンガーの考え方が、それぞれうまくまとめられていました。

企業の経営と投資へ取り組みに違いはない

バフェット関連の本のレビューを見ると、「経営に関する内容で、投資の参考にならない」という書き込みがよくあります。

「投資家はどのような企業に投資すべきか」については、それぞれの目的によって異なるとは思いますが、「他の企業よりも多くの利益を生み出せる企業」という点はある程度一致していると思います。「どのような企業が多くの利益を生み出せるのか」と考える投資家と、「どうすれば競争相手よりも多くの利益を得られるのか」と考える経営者の答えに、それほど大きな違いがでるようには思えません。

バフェットは「企業の経営と投資への取り組みに違いはない」と言っています。「企業を買収するときと株式の一部を買うときに、見るべき重要な点は同じである」というようなことが本書の中でも出てきていた気がします。「株式を買う」というのは、「その企業が行っている事業に出資する」という本来の役割を考えれば、当然のことではありますが。

バフェットの銘柄選択

「第3章 12の原則で事業を買う」を読めば、バフェットがどのような銘柄選びをしていたのかがおおよそわかります。12の原則は4つに分類されていて、事業、経営者、財務、市場についてです。財務については経営者の考え方についてであり、市場については事業の価値について論じられているので、大雑把にまとめると、まず事業と経営者に着目し、原則をクリアしたあとで、株価や市場価値について考えています。

本章の中で書かれている「過ちを犯すとすれば、価格が高すぎたか、経営者を見誤ったか、事業の将来性を読めなかったかのどれかだ」(Kindle 位置No.1493)というバフェットの言葉からも、事業、経営者、価格の3つが、銘柄選びの重要なファクターであると考えられます。

ただし「優秀な経営者に、本質的に不審な企業の経営をしてもらっても、企業の質の悪さが勝ってしまうものだ」(Kindle 位置No.1332)というバフェットの言葉からも分かる通り、まず始めに考えるべきことは事業についてです。その理由については、本書の中ではおそらく書かれていませんが、経営者が一人二人変わったところで、組織文化や集団的な意思決定プロセスなどの時間をかけて作られてきたものは簡単には変わらないということなのかもしれません。

フォーカス投資

バフェットは「定期的にインデックスファンドに投資すれば、何の知識もない投資家でも、多くのプロよりよい成績を上げられる」(Kindle 位置No.2756)と述べています。ただし、アクティブファンドもインデックスファンドも一般的に高いリターンを生み出すことはありません。これは、分析に時間をかけられない投資家は市場平均で満足すべきであるというグレアムの考え方でもありますし、過去のデータからも明らかだと思います。

個別株の長期投資にはバリュー投資とグロース投資の2つがありますが、バフェットはこの2つの投資戦略は根っこでつながっていると考えており、「価値は、投資の将来のキャッシュフローの現在価値であり、グロースは、価値を決定するための計算に過ぎない」(Kindle 位置No.1479)と書かれています。フィリップ・フィッシャーの『株式投資で普通でない利益を得る』の監修者まえがきでも似たようなことが書かれていましたが、結局は視点が違うだけで対立する考え方ではないわけです。

バフェットは第3の投資方法として、フォーカス投資を挙げています。「フォーカス投資とは、長期的に平均以上のリターンを生み出しそうな少数の銘柄を選び、投資資金の大部分をそこに集中させ、短期的な市場の上げ下げの中でも断固として保有し続けることである。」(Kindle 位置No.2759)と書かれています。

銘柄を選び、資金を集中させ、保有し続ける。一見単純で当たり前のことに思えますし、冷静になって考えれば誰もが納得できる方法だと思えますが、銘柄選びには知識と経験が必要ですし、資金の集中や保有し続けるという行為は心理的なハードルがあります。誰もが納得できても、誰もが行える方法ではないのかもしれません。

以前、経済ニュースのテレビ番組で「億り人」と呼ばれる個人投資家のポートフォリオを見ましたが、わずか数銘柄に投資資金の大部分を投入していました。まさにフォーカス投資ですね。もう一つ私が注目したのは、その銘柄がすべて日本株だったことです。いくらインターネットが普及して海外の情報を瞬時に見ることができると言っても、文化も違うし言語も違う、価値観も違うし企業に対する見方も違うわけですから、我々日本人の価値観をそのまま適用できない可能性もあるわけです。その企業のある国や地域に住んだことでもない限り、そういった不透明性があるわけですから、意図的に外国株を避けているのかもしれません。

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