グロース投資のお勉強【株式投資で普通でない利益を得る】

『賢明なる投資家』などの著者であるベンジャミン・グレアムの考え方はバリュー投資と呼ばれていますが、『株式投資で普通でない利益を得る』の著者フィリップ・フィッシャーの考え方はグロース投資と呼ばれています。それぞれ直訳すれば「価値投資」と「成長投資」となるでしょうか。

本書『株式投資で普通でない利益を得る』の監修者まえがきでも書かれていますが、バリュー投資は現在の事実を調べることに注力し、グロース投資は将来の可能性を評価することに重点を置いています。この説明からも、この2つの考え方が必ずしも相反するものではないということがわかります。だからこそ、グレアムとフィッシャーの2人に大きな影響を受けたとされるウォーレン・バフェットは、この2つの考え方を統合して独自のスタイルを築き上げることができたわけです。

フィリップ・フィッシャーという人物

私はKindle版を購入していて、おそらく紙の本でも同じだと思いますが、最初の3割弱は息子のケネス・フィッシャー(書籍の著者名やネット上ではケン・フィッシャーとなっていることが多いようです)が、この本と著者フィリップ・フィッシャーについて書いたものです。そこでは、フィリップ・フィッシャーは稀有な人物として描かれていますが、作家や芸術家には多いタイプなのではないかと感じました。それを私なりに要約すれば、人と長時間一緒にいることを好まず、変化を嫌い、病的なほど習慣を大事にする人物です。個人的にはとても興味深いものがあります。

本人がどう思っていたのかはわかりませんが、息子のケネスによると三つのWを楽しんでいたとあります。それは歩くこと(walking)、心配すること(worrying)、仕事をすること(work)です。本書を読む限りかなり不安感が強い人物であったことが読み取れますが、それを歩くことや仕事をすること、そして心配することによって和らげていたことがわかります。不安感が強かったからこそ、その後何十年も残るようなリスクを避ける投資の方法を行っていたともいえます。

ちなみに、息子のケネスも資産運用会社を設立して大きな成功を得ているようです。監訳者まえがきでは、フィリップ・フィッシャーによる最高の成功事例は、本当は事業家としてのケネスを間接的に創り出したことなのではないかと述べられています。

この本の全体像

この本はグレアムの『賢明なる投資家』とは異なり、数値を用いた分析方法はほとんど出てきません。この本の核になっているのは第2章で出てくる「周辺情報利用法」という考え方です。会社の関係者などに話を聞くことで、同じ業界内でのその会社の相対的な強さや弱さなどの様々なことがわかるというものです。第2章は数ページしかありませんが、「周辺情報利用法」はこの本全体を通して出てきます。

今の日本で、ただの個人投資家が会社の関係者に話を聞くことは、知り合いがいたりコネでもない限り難しいとは思います。ただし、監修者まえがきでも書かれていますが、「周辺情報の利用は20世紀半ばよりも情報通信技術による社会ネットワークの発達した現在のほうがむしろはるかに簡単である」というわけです。むしろ難しいのは、情報を得ることよりもその情報の信頼性の評価や分析に取り入れるべき情報なのかという判断だと思います。

3〜5章では、「何を買うべきか」と「いつ買うべきか」が書かれており、第6章では「いつ売るべきか」、第7章では配当金について、8章と9章では投資家が避けるべきポイントを、第10章では「成長株を探す方法」、第11章は「まとめと結論」となっています。

私のハイライト

この本を読んだときに、私がハイライト(マーキング)した部分について見ていきます。

まず最初は第4章「どんな銘柄を買うべきか―自分のニーズに合う株を買う」の中で語られていることで、要約すると「成長株と割安株を比べると、割安株の利益は取るに足らないものだ」ということです。文脈から察すると、ここでの割安株とは、会計や統計の分析を行って見つけた株で、それ以外の企業分析を行っていない株のことです。そして「その割安の程度はたいていは限定的だ。そして、それが本当の価値に追いつくには通常は時間がかかる」としたうえで、成長株は10年単位で価値が何百パーセントも上昇していると述べています。つまり、成長株を買うときの数パーセントの株価の違いなど誤差の範囲でしかないということです。

次は第5章「いつ買うべきか」の中の一文で「手持ちの資金を一回で投入せずに、数年間かけて計画的に買ってほしいのだ。そうすることで、その間のどこかでマーケットが激しく下落しても、その下落を利用して増し玉をすることができる」です。これはよく言われる購入時期の分散ですね。

次は第6章「いつ売るべきか―そして、いつ売ってはならないか」の最後の一文で「正しい魅力的な株を買っておけば、その株を売るときは……来ないかもしれない」というものです。正しい魅力的な株とは、企業も株価も成長を続けている株ですから、それ以上魅力的な株が出てこなければ売る必要はないですね。

次は第7章「配当金をめぐるさまざまな言い分」の中の一文で「5〜10年の期間で見た場合、最高の配当リターンを上げるのは高利回りの株ではなく、比較的低利回りの株なのである」というものです。これについては、最近になって私も考えるようになっていました。配当性向が70%や80%もある企業は業績があまり伸びていないことが多いように感じており、今後の中で業績が伸びるにしても、おそらく設備投資や研究開発費がかさみ、低利回りの株よりも配当利回りが低下するのではないかという懸念がありました。市場が縮小していて、新たな収益源を見つけられずに手をこまねいているようにさえ見えます。低利回り株の方が最終的には高い配当リターンを得られるというこの指摘が日本株にも当てはまるのかどうか、調べて見る価値はありそうです。

続いて第9章「ほかにも避けるべき五つのポイント」の中の1つ目に「分散しすぎない」というものがあります。保有する銘柄を分散するというのはもはや当たり前のこととして受け入れられていますが、どれくらい分散すればよいのかについては専門家は言葉を濁します。というより、保有する銘柄同士の関係性によって変わってくるわけですから、ここでの分散は単に保有銘柄の種類を増やすことではなく偏りをなくすということになるので、単純にいくつとはいえないわけです。本書ではこうしたことを考慮した上で、あえて数字で示しています。まず「安定した大手企業のなかから適切に選んだ成長株に投資する」場合は「分散は最低五銘柄で十分かもしれない」と述べています。ただし、この「五つの会社の製品ラインが少ししか重なっていないというのが前提だ」としています。

「安定した大手企業とリスクが高い若い成長企業の中間に位置する会社に投資するケース」では、大手企業1社に対して2社は必要だとしています。つまり、すべてこのタイプの銘柄に投資する場合は10銘柄となります。

そして「成功すれば素晴らしい利益につながるが、失敗すればほとんど(またはすべて)の資金を失うかもしれない小型株に投資するケース」では、「失うわけにはいかない資金を投資してはならない」とし、さらに、個人投資家の場合は適切な分散を行ったとしても、「素晴らしい利益を得るには資金が少なすぎる」としています。つまり、個人投資家は手を出すべきではないということです。

「分散しすぎない」という項目の最後では「株の世界では、大量の銘柄を少しずつ保有しても、二〜三銘柄の優れた株を保有する代わりにはとうていならないのである」としています。

長くなったので最後にひとつ。「なかでも最も役に立たない統計が、株価の過去のレンジである」とし、いくつかの例を出してけちょんけちょんにした上で、「過去の利益や株価のレンジを完全に無視すべきだということなのだろうか。そうではない。これらの数字を必要以上に重視すると危険だということだ。過去のデータも、株の魅力を判断する主要な要素としてではなく、特定の目的のために補助的なツールとして使えば大いに役に立つ」としています。

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