これまで読んだ投資本の内容を私なりにまとめてみた【積極的投資家編】

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ベンジャミン・グレアムの教えに従うのなら、ほとんどの投資家は防衛的投資家であるべきで、市場平均とほぼ同等のリターンで満足すべきであるということになります。

では、「ほとんどの投資家」から外れる投資家、つまり投資を事業として生計を立てるような積極的投資家はどのような考え方をすべきなのかを見ていきます。

なぜ定量化された必勝法は存在しないのか

この問に答えを出すなら、株式投資が「市場平均を基準(ゼロ)としたゼロサムゲームに限りなく近い」ことと「投資をする人間に無数の選択肢がある」という2点が挙げられます。誰にでも簡単に行なえる必勝法が広く知れ渡れば、多くの人がその方法を実践することになります。多くの人が実践するということは、その方法から得られるリターンは市場平均に近づくことを意味します。そしてその環境で別の必勝法が発見され、もとの必勝法は必勝法ではなくなります。

こうしたことは当たり前のことなので触れられることは少ないですが、意外と見失いがちです。

バリュー投資

定量的方法についてはグレアムが7つの基準を示していますが(『新 賢明なる投資家 下』第14章)、これは防衛的投資家に向けたものなので、市場平均を大きく上回ることは期待できないでしょう。

グレアムは「平均的な賢明なる投資家がいくら努力をしたとしても、成長株の購入でこの分野を専門とする投資会社よりも良い結果を、何年にもわたって得られるとは考えにくい」(『新 賢明なる投資家 上』P284)としていることから、一般投資家がグロース投資を行うことには否定的です。

『賢明なる投資家』を読むと、最初から最後まで徹底的に防衛的立場を取ろうとしている印象で、バリュー投資で市場平均を大きく上回ることは難しいと思われます。バリュー投資を簡単に表現すると「過去の業績と現在の株価を比較して割安な株に投資する」ことなので、定量的にならざるを得ません。おそらくこのことが、ウォーレン・バフェットが定量的要素だけではなく、フィリップ・フィッシャーが用いたような定性的要素も重視するようになった理由ではないかと思われます。

グロース投資

グロース投資を簡単に表現すると、過去の業績よりも、将来の業績が大きく向上するかという点を重視して分析します。フィリップ・フィッシャーの『株式で普通でない利益を得る』で書かれている「15のポイント」では、市場の大きさであったり、研究開発、販売体制、コスト削減、人材育成など、まるで経営学の入門書のような内容になっています。株式投資が会社への投資であることを考えれば当然のことで、これが株式投資の本質であるとも言えます。

フィッシャーは、15のポイントで分析する前の予備段階として、2つのことに注目していると述べています。それは「その事業が並外れた成長を見せる可能性があるかどうか」と「その業界が成長したときに、競合他社が参入してくるのが難しいかどうか」です。これらは、経営学で議論されるべき内容そのものです。

経営学の本では「どうすれば競争力のある会社にできるのか」を論じているのに対して、投資本では「どのような会社が大きく成長するのか」を論じており、視点が異なるという違いはあります。ただ、経営学の基本的な知識があったほうが、投資においても有利に働くのではないかと思います。

なぜ「高く買って、安く売る」ということが起こるのか

これについては、多くの本で一致しています。上昇相場では、この上昇が永遠に続くものと錯覚し楽観的になったり、自分だけが乗り遅れてしまわないようにと、明らかに割高になっている株でも買ってしまうことと、なんらかのきっかけにより株価が暴落すると「もっと下がるのではないか」という不安と「皆が売っているから売ろう」というある種の群集心理に陥り、正常な判断ができなくなることです。

これらの背景にはおそらく「不安や恐怖の中で、周りの人と違う行動をとることへの抵抗感」であるとか「そのときの感情が判断材料として使われている」ことがあると思います。これを回避するには、自分が置かれている状況を理解することと、自分の現在の感情を客観的に見るメタ認知が必要であることが挙げられます。極端なことを言えば、投資に関する知識をどれだけ持っていたとしても、自分の感情に振り回されるようでは「高く買って、安く売る」という行動から抜け出せないということです。

そもそも長期投資においては、株価が下がったから売らなければならないような株は、その株を購入したこと自体が間違っていたことを意味します。もちろん業界構造やその会社の変化によってこれ以上成長が期待できなくなったり、その業界が縮小していく場合には売ることも考える必要があります。ただし、世界経済の減速や後退などが原因で株価が下がっている場合には、その会社や業界構造が変化しているわけではないので、近い将来における成長期待はなくならないはずです。このことは『株式で普通でない利益を得る』の第6章の最後で「正しい魅力的な株を買っておけば、その株を売るときは……来ないかもしれない」という一文からもうかがえます。

どれくらい分散すべきなのか

分散する理由は、特定の株が何らかのきっかけにより大きく株価を下げたとしても、他の株価が下がらなければ、資産全体で見た場合に損失を限定できることだと思います。一般的に考えるとこれは、大きな損失を出す可能性を低くするのと同時に、大きな利益が得られる可能性も低くなることになります。

『新 賢明なる投資家 上』の「ひとつのバスケットに卵を全部入れるべきか?」(P327-329)を見ると、『「普通株で巨万の富」を築いているのは、実は全財産を自分が熟知しているひとつの投資対象に注ぎ込んだ人々なのだ』となっています。ただし、この方法でわずかな財産を築いた人はほとんどいないし、莫大な財産を維持した人もそう多くはないとも言っています。

おそらく、ひとつの投資対象で莫大な財産を築いた人の裏には、何百倍か何千倍か、あるいはもっと多くの人の失敗例があると考えられます。ただし、忘れてはならないのが「自分が熟知しているひとつの投資対象」という点で、この方法で成功した人の中には経営に関与していた人も少なくないのではないかと思います。結局は、その会社のことをどれだけ熟知しているのかということが結果に大きく影響するでしょう。

これらのことから見ても、一般の投資家は資産を失わないためにもある程度分散する必要があることがわかります。ただし、個別株を分散しすぎると、その会社の経営に関連する出来事を把握したり、定期的に業績などの経営状態を確認するのに非常に時間と手間がかかることになります。また、複数の会社の株を持っていたとしても、その多くが関連する事業を行っている場合には分散にはならないことも注意すべきです。

フィリップ・フィッシャーは『株式で普通でない利益を得る』の第9章では、安定した大手企業で適切に選んだ成長株であれば、最低5銘柄で十分かもしれないと述べています。また、大手企業とリスクが高い小型株の中間に位置する会社に投資する場合は、資金の8〜10%、つまり最低10銘柄としており、リスクの高い小型株について個人投資家の場合は、素晴らしい利益を得るには資金が少なすぎるとしています。

これらのことを考えると個人投資家の場合は、各会社の製品や製品ラインが重複していないことが前提で、最低でも5銘柄、最大で12〜13銘柄というのが妥当な数なのかもしれません。

その他

最後に、株式投資において重要だと思われる部分を3つ引用したいと思います。2つ目と3つ目はほぼ同じ意味だと思いますが…。

「1ドル札を40セントで買うほうが60セントで買うよりもリスクは低くなりますが、報酬に対する期待は前者のほうが高くなります」(『新 賢明なる投資家 下』P442)

「…大きな利益を得るためには忍耐が必要ということである。株価に何が起こるかを予想するほうが、それがいつ起こるかを予想するよりも簡単だからだ」(『株式で普通でない利益を得る』まえがき Kindle 位置No.952)

「予測は不可能、準備は可能」(『投資で一番大切な20の教え』P122)

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