投資の心理学【投資で一番大切な20の教え】

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今回はブログなどでおすすめの投資本として紹介されていることが多い『投資で一番大切な20の教え』を読んでみました。ウォーレン・バフェットが大量購入し、バークシャー・ハザウェイの株主総会で配布したという話があるほど有名な本のようです。

読んでみた感想としては、これまで私が読んできた投資本の心理学的な面を凝縮した本という印象を受けました。社会心理学や行動経済学の知見を投資環境に応用したといった感じです。

「はじめに」でも書かれていますが、この本は「ハウツー本」ではなく「思考方法の紹介」になっています。それらを大雑把に見ていくと決して新しい考え方というわけではありませんが、例えば「リスクやリターンとはなにか?」というところまで踏み込んで書かれていたりするため、読者の思考を広げてくれる本になっています。

特に印象に残った部分は「予測は不可能、準備は可能」(P122)という言葉です。生命保険会社の広告スローガンから持ってきたらしいですが、この言葉を見たときに思い出したのは「果報は仕込んで待て」という言葉です。どの本に書かれていたものなのか忘れましたが、「果報は寝て待て」ではなく、仕込んでから寝て待てという意味です(おそらく「果報は寝て待て」にもこのような意味が含まれているとは思いますが…)。「予測は不可能、準備は可能」と若干意味は違いますが、「結果を予測することはできない」という部分は共通しています。

ちなみに、この本は全体的に「予測は不可能、準備は可能」というスタンスで書かれています。

「経験は、望んでいたものが手に入らなかったときに得られる」P9

シンプルで良い言葉です。相場が良い時期に得られるのは悪い教訓ばかりで、最も価値のある教訓が得られるのは厳しい時期だと書かれています。

本書の内容からは少し外れますが、私はこれを「失敗することによって学習する機会が得られる」と解釈しました。学習を「行動の変容」と捉えれば、自分の予想した通りに物事が進んでいるときに学習できる人はごく僅かです。多くの人は失敗を体験することによって行動を変えなければならないことを自覚します。

ただし、成功体験は記憶に残りやすいが小さな失敗は記憶から消えるというやっかいな傾向が人間にはあります。相場が良い時期は特にこの傾向が強くなります。このブログでも何度か書いてきましたが、ポジティブな気分のときにはポジティブなものばかり目につくようになるわけです。「小さな失敗は無視すべきだ」という考え方もありますが、少なくとも自分の予想通りに物事が進んでいるときには小さな失敗に目を向けたり、なぜ上手くいったのかを考えて分析する方法を学んでおくべきなのではと思いました。そうすれば心理的に余裕ができ「高値で買い、底値で売る」という愚かな行為も減るのではないかと思います。「言うは易く行うは難し」ですが…。

「バリュー投資とグロース投資とをはっきり線引することはできない」P46

本書におけるバリュー投資家とグロース投資家の違いを要約すると、「バリュー投資家は現在の本質的価値が現在の株価よりも高い場合にその株式を買う」となり「グロース投資家は将来的に本質的価値が急増すると確信すればその株式を買う」となります。ただし、バリュー投資家も企業の成長性を考えるし、グロース投資家も割安感のある株を好みます。「要するに、何にどれだけ重きを置くかという程度の問題である」(P46)と述べています。

そもそも、バリュー投資家とグロース投資家の考え方は論理的には両立しないわけではありません。「割安でなおかつ将来的に本質的価値が急増すると確信できる株」というのも考えられるわけです。滅多にお目にかかることはできないのかもしれませんが…。

リスクは低く、リターンはそのままに

資産運用をリスクとリターンの2次元で見た場合、ほとんどの市場観測者は、ベンチマークと同水準のリスクをとって、ベンチマークよりも高いリターンを達成することを考えていると言います。しかし、ベンチマークよりも低いリスクをとってベンチマークと同水準のリターンを達成することのほうが優れた運用であると著者は述べています。

この考え方は私の中にはなかったので、シンプルで面白いと思いました。

そして本書の最後のほうで述べられている自身の投資会社オークツリーが理想とするパフォーマンスについて、「つまり我々の目標は、相場が良いときには市場と同等のパフォーマンスを、相場が悪いときには市場を上回るパフォーマンスをあげることだ」(P297)と書かれています。上述の優れた運用と重ね合わせれば、「低いリスクをとっているわけだから、相場が悪いときには市場を上回るパフォーマンスをあげることができる」と解釈できます。

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