株の本質がわかる【ピーター・リンチの株で勝つ】

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今回は、ブログなどでおすすめの投資本として紹介されていることが多かった『ピーター・リンチの株で勝つ』を読んでみました。基本的な考え方はグレアムの『賢明なる投資家』やフィッシャーの『株式投資で普通でない利益を得る』と類似していますが、本書では個人投資家よりの視点で描かれているので、想像しやすいのではないかと思います。

印象に残っている部分は、プロの投資家も組織の中で仕事をする人間であるということと、アマチュアでも自分の専門分野や得意な分野に投資をすればプロよりも高いリターンを得やすいということ、そして株価の動きによって株を分類し、それぞれの株のメリット・デメリットが挙げられていたことです。

本書は株の本質を理解する上で有用なものだと思いますが、所々でアメリカンジョークのようなものが出てくるので、アメリカ内部での有名な出来事や文化的な背景がわからないと、何が言いたいのかわからない部分が多々あります。訳注で補足されている部分もありますが、私はなんとな〜く流しましたw。

アマチュアの強み

本書の「はじめに」では、「プロの言うことに惑わされるな」「アマチュアが失敗するのはプロの真似をしようとして後追いするときだけである」としています。

ドーナツやストッキングなど身近な商品を扱う銘柄を挙げた上で「一般投資家のなかには、町に行ってドーナツを食べることが株式の基礎的調査の第一歩になる、と気づいていない人が多く見られる」とし、「何も知らないわかりにくい会社への投資のほうが安心していられるような変な投資家心理がある」と述べています。

たしかに、テレビや雑誌などで目にする話題はハイテク産業の割合が多いのでそちらに目がいきがちになりますが、その事業内容を細部まで理解している人は少ないでしょう。情報を提供する側の視点で見ても、目新しいもののほうが興味を引きやすいわけですから、そうした情報が増えるのも当然です。

「わかりにくい会社への投資」の代表例はITバブル時期の「IT企業」とか「ドットコム企業」への投資でしょうか。今思えば、結果的に大成功を収めているのはアマゾンのようなわかりやすい事業を行っている企業ばかりです。

少し話がそれましたが、身近な商品を扱う日本企業で大きく成長したものはなんだろうかと考えると、ユニクロ(ファーストリテイリング)やニトリなどが思い浮かびます。調べてみると、過去10年間で10倍とはいかないまでも5倍近く株価は上昇しています。リーマンショックの直後からの数値なので上昇して当たり前ともいえますが、日経平均株価が2倍くらいにしかなっていないことを考えれば高い上昇です。

プロの投資家は組織の中で働いているがゆえに、社会的な立場を守るためであったり上司の圧力などもあり、周囲の人達が買わないような銘柄を選択することはかなりの勇気がいることだと言います。優良だといわれている銘柄や人気のある銘柄を買って損失を出したとしても「なぜ株価が下がったのだろう」といわれるだけですが、だれも注目していないような銘柄で損失を出すとクビになりかねないらしいです(アメリカでの話です)。

プロが買いたがる、あるいは既に買っている銘柄の情報はテレビや雑誌などで既に世に出回っているため、そうした情報を使ってプロに後追いするのではなく、日常生活から得られる情報をうまく使うことが、プロに勝てるアマチュアの強みであるとしています。

株の6つの分類

どのような銘柄を買うべきかという議論ではさまざまな指標や方法が見受けられますが、これらを株全般に当てはめるには無理があるだろうとは思っていました。ただ、どのように株を分類すれば良いのかがいまいちわかりませんでした。バリュー株とグロース株で分類することも検討しましたが、実際にやってみると重なる部分が多すぎて分類になりませんでした。

本書では、低成長株、優良株、急成長株、市況関連株、業績回復株、資産株の6つに分類して、それぞれのメリット・デメリットと、どのような点に注目すればよいのかが挙げられており、大変勉強になりました。

銘柄選びの注目ポイント

第8章「完璧な株、なんて素晴らしい!」では、投資対象を選別するポイントとして13項目を挙げています。「言われてみれば確かにそうだ」と思えるものばかりですが、いざ株を選ぶとなるとこうした視点を忘れがちになります。

特に無成長産業を狙うという考え方です。急成長産業は競争が激しく新しい技術が次々に開発されるため、業界構造の変化も激しくなります。多くの企業は淘汰され、急上昇した株価が急落するということもあります。しかし、無成長産業では新規の参入業者が少なく競争も少ない事が多いため高い利益が得られ、事業拡張の余地も少ないため高配当が行われやすくなります。

感想

私の中では、インデックスファンドだけに投資すべきか個別の株も買うべきか悩む時期もありました。本書を含めいくつかの本を読むうちに、企業を分析する時間が十分にとれる場合に限り、個別株を買うほうが安全に高いリターンが得られるものなのだと思うようになりました。

本書を含め良書の多くは「言われてみれば確かにそうだ」と思えるものが多いです。アマゾンなどのレビューではこれを「当たり前のことしか書かれていない」と切り捨てている人も見られますが、極端なことを言えばこの当たり前のことを実行できるかどうかが問題なわけです。

マジシャンは超能力者ではありません。タネさえわかれば「当たり前」の現象が起きていることがわかるはずです。

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