成長の罠。長期投資における配当金の重要性【株式投資の未来】

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結構有名な本だと思うのですが、Kindle本がなかったので後回しになっていました。ようやく紙で購入しました『株式投資の未来』。

サブタイトルが「永続する会社が本当の利益をもたらす」となっており「倒産すれば株の価値はなくなるわけだから、そりゃそうだ」と思いながら読み進め、読み終わった今でもそれ以上の意味はわかりませんでしたw。もしかしたらS&P500に残り続けている企業という意味なのかもしれませんが、そもそもこのサブタイトルは原著にはないみたい。

内容に関しては最初から最後まで一貫しており、個別株を長期で持ち続ける場合、急成長するグロース株よりも割安なバリュー株の方がリターンが高いということを、過去の実績から示しています。一見すると急成長するグロース株の方がリターンが高そうに見えるので、本書では「成長の罠」という言葉が使われています。

長期の株式投資は、配当利回りと配当再投資が重要

なぜグロース株よりもバリュー株の方がリターンが高いのかについて本書の中でいくつか理由が書かれていたと思いますが、私の記憶に残っているのは「グロース株は購入時点ですでに割高になっている」ことと「割安なバリュー株は配当利回りが高い」の2つです。

1つ目の「グロース株は購入時点ですでに割高になっている」を私なりに解釈すると、人気のグロース株は数年後の業績が織り込まれていたり投機筋の買いが入りやすいため、その時点でのPERやPBRは高くなりやすい傾向があります。規模が小さいうちは成長速度が速いため、未来の業績を考えればそれほど割高には思えませんが、事業規模が大きくなれば成長速度は低下します。成長が鈍化すればPERやPBRは徐々に低下していくため、業績の上昇と株価の上昇は一致しなくなり、ある時点から株価上昇によるリターンは期待できなくなります。あらためて書いておきますが、あくまでも長期で持ち続ける場合の話で、投機でのリターンの話ではありません。

もう1つの「割安なバリュー株は配当利回りが高い」について、本書では、S&P500種総合株価指数ができたときに採用されており今も残っている銘柄で、とくに運用成績の高い20銘柄を見ると、11社が有名ブランドを揃える消費者製品の会社であり、6社が医薬品会社であることが書かれています。これらの企業に共通しているのは、世界中の市場で強力なブランドを育てることに成功した点だと言います。ただし、PERは市場平均をごくわずかに上回る程度でしたが、増益率はS&P500を4ポイント近くも上回っていたそうです。重要なのは、これらの株価が過小評価されているため配当利回りが高くなるということです。その配当金で過小評価されている株を買うことで、保有株をどんどん積み増してさらに配当金が増え、資産を増やしていけるため、グロース株よりもバリュー株の方がリターンが高いというわけです。

少子高齢化で、誰が株を買うのか

本書の2割か3割くらいは高齢化に関連する話になっています。『株式投資の未来』というタイトルにしたのも、なんとなくわかります。

少子高齢社会における社会保障の問題はよく見聞きしますが、私がまったく気にもしていなかった問題が、リタイアした人たちが現金に変えようとしている株、債権、不動産を、いったい誰が買うのかという問題です。売り手よりも買い手が極端に少なければなかなか売れなかったり、資産価値が減少するということが起こります。

ただ、少子高齢化が起こっているのは先進国に多く、世界全体で見れば高齢化していない国のほうが多いようです。なので、途上国の若い人たちが株など買ってくれるため、この問題は解決できると言います。著者はこうした解決を「グローバル・ソリューション(世界的解決)」と呼んでいます。

社会保障の問題についても、途上国の人を労働者として受け入れるなどグローバル・ソリューションの考え方を用いると緩和できるものの、それは途上国の急成長が持続することが前提であるといいます。

この話は株式投資から離れてしまうのでここで終わりにしますが、この本は株だけでなくこうした社会的な問題にも結構なページを割いているので、ちょっと視野が広がりました。

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