バリュー投資の教科書【新 賢明なる投資家 下】

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上巻を読み終えてからなんだかんだあって2ヶ月も経ってしまいました。

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上巻では投資における基本的な考え方が多く掲載されていましたが、下巻では具体的な分析方法が大半を占めています。特に、第14章「防衛的投資家の株式選択」は、投資初心者の私にとっては大変勉強になりました。

防衛的投資家の株式選択

この章の注解(原著者グレアムの文章ではない)では、「基本的に保有するに値する全銘柄を組み入れている株式市場インデックスファンドを購入すれば、もっと簡単に買い付けることができる。」と述べられており、自分で銘柄を調査し選択することは、ほとんどの人には望ましいものとはいえないと書かれています。ただ、個別銘柄を選び出すことを娯楽や知的な挑戦と捉えているような人の場合は、投資資金の90%をインデックスファンドで運用し、残りの10%を自分で選んだ銘柄に投資すればいいと書かれています。

私の場合は、インデックスファンドはiDeCo(個人型確定拠出年金)とつみたてNISAの口座だけで運用して、通常の証券口座では個別株だけで運用しようと考えています。ただ、投資資金が少ないこともあり、すでに個別株の割合が50%を超えている状態なのでいつか見直したほうがいいと思う一方で、最初は好きにやってみて失敗するのも悪くないかなぁとも思っています。何事も経験です。もちろん全財産を投入しているわけではありません。

インデックスファンドは、個別の銘柄を分析する時間や意欲のない人にとってはとても便利なツールで、特に積立投資の場合は最初の設定さえ終えてしまえば、後は定期的に証券口座にお金を振り込めばいいだけです(楽天証券の場合は楽天銀行と紐付ければ、お金を移動させる作業も自動でしてくれる)。ただし、お金以外に得られるものはほとんどないと考えていいと思います。個別株を購入する場合は、その企業や業界あるいは社会的な方向性や世界の経済状況など考える必要があるため、さまざまな知識が得られます。もちろん投機ではなく投資をする場合に限りますが…。

話がそれましたが、グレアムは防衛的投資家の分散投資には2つの選択肢があるとしています。ひとつはインデックスファンドと同じように、ダウ平均採用銘柄などの主要銘柄を網羅的に買う方法、もうひとつは計量的な基準で選んだ銘柄でポートフォリオを構築することです。この2つ目の方法で重要になる基準を7つ挙げています。

ひとつひとつの説明はここではしませんが、実際に15銘柄を選んで分析してみました。選択基準は、私が欲しいと思っている銘柄と超優良と言われている銘柄です。なお、選んだ銘柄はすべて日経平均225採用銘柄です。また、配当歴は「少なくとも過去20年間において無配当の年がないこと」となっていますが、過去20年間の配当歴がわかるサイトを見つけることができなかったので、過去10年間としました。

すると、上の7つの基準をすべて満たしたのは、15銘柄中1つだけでした。私の選択が悪かったのかそれぐらいの割合が普通なのかはわかりませんが、最も厳しい基準だと感じたのは「十分に健全な財務状況」の項目で、これをクリアしたのは15銘柄中3つだけでした。内容はいわゆる「流動比率2:1」で、「流動資産が流動負債の2倍以上であること」というものです。アメリカの企業と比較すると日本企業はこの流動比率が小さいようなので、そのまま適用していいものなのか疑問はあります。私が選択した銘柄だけで見ると、1.7倍以上と1.3倍以下で2極化しているので、基準を1.7倍かあるいは1.8倍以上としてもいいのかもしれません。

もうひとつ気になったのは、収益の伸びです。本書では「過去10年間において初めの3年間と最後の3年間の平均を比べて、1株当たり利益が最低3分の1以上伸びていること」となっています。10年前と言えばリーマンショックの直後だったので、私が調べた15銘柄では14銘柄で3分の1以上の収益の伸びが確認できました。つまり、ほとんどの銘柄が当てはまってしまうのです。これは何らかの統計的処理が必要なのかもしれませんが、素人の私には荷が重い作業ですw。

感想とか

「株の分析はこうするのか」という全体像が見えてきました。上述した7つの基準を見ると、「十分に健全な財務状況」と「配当歴」は組織の性格が見えますし、「収益の安定性」と「収益の伸び」ではその業界の状況が見え、「妥当な株価収益率」と「妥当な株価純資産倍率」ではその企業に対する投資家の評価がわかります。

個人的には配当性向に関する何らかの基準がほしいところです。いろいろ調べていて気がついたのは、配当性向を自社のサイトで明示している企業は業績が安定しているということです(数十社を見ただけなので私の思い込みかも)。逆に業績が安定しているからこそ配当性向を明示できるともいえますが。

配当金は従業員の給与と同じように上げるのは簡単ですが、下げるのはさまざまなリスクを伴うものだと思います。ただ、利益は配当金としてしっかりと株主に還元してほしいものです。株主還元の方法は配当金だけではないですが、ゆっくりと確実に業績を伸ばし、それに伴って配当金もゆっくりと増えていくような銘柄が長期投資には向いているような気がします。

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