心の声に耳を傾ける【敏感すぎるあなたへ 緊張、不安、パニックは自分で断ち切れる】

不安には随分苦しめられてきましたが、なぜかデール・カーネギーの『道は開ける』以外には不安に関する本をあまり読んだことがありませんでした。そういった本をあまり信用していなかったのかもしれません。

アマゾンのサイトを見ていたときにたまたまおすすめの本として掲載されていたので、『敏感すぎるあなたへ』という本を読んでみることにしました。

本書の全体像

本書は全6章に分かれていて、第1章「不安やパニック―その真の原因は?」では、パニック発作の重要な原因を4つ挙げており、「そのひとつひとつに1章を設けて説明している」と第1章で書かれています。ただし、第1章で書かれている原因とそれぞれの章のタイトルが異なるので、最初はかなり戸惑いました。3つ目までは内容は対応していますが、4つ目は対応してないみたいです。4つ目になるはずの第5章は「困ったときの即効テクニック」となっています。そして最後は第6章「不安にさよならする日」で締めくくられています。

不安の原因

不安は身体の正常で健康な反応であり、不安の役目はわたしたちを守ることである、と第1章の冒頭で語られています。

本書では、不安やパニック発作の重要な原因として以下の4つを挙げています。

※原因は4つで、第1章の節が5つあるのでわかりにくいですが、たぶん4つ目はセカンダリーゲインだと思います。もしかしたら間違っているかもしれません。

警告を無視する

警告には、精神的な警告と肉体的な警告があり、精神的な警告には、記憶力や集中力が突然落ちる、やる気がなくなる、無力感、わけもなく悲しくなるなどがあり、この最終段階がパニック発作であるといいます。

一方で肉体的警告は、胃腸の不調、視力が突然落ちる、皮膚炎、筋肉の痙攣などがあります。これらを含め、椎間板ヘルニアやヘルペスさえも精神的な原因から起きることが珍しくないといいます。

何かを我慢し続けたりするなど精神的に大きな負担がかかるようなことを続けていると、無意識はそれを変えさせようと警告を発するということです。初めてのパニック発作が起こるときの最大の原因は、その警告を無視し続けることだと書かれています。

ここで言う警告やパニック発作は、自分自身を守るための心の声であるとも書かれています。

外的要因

本書で言う外的な要因とは、食事や薬、家族や仕事環境の問題、世の中や人間関係の変化などのことを指しています。いくつかの要素が互いに影響しあっていることもあるので、自分に関係があるのはどれかがわかると解決しやすくなると言います。

この章の最後には「楽しみ、リラックスする」という節があり、『今日のうちにもぜひ、「したいことリスト」を作ってください』という文から始まります。したいことリストにあることをしていれば、エネルギーを充電できるというわけです。

「そんなことをしている時間はない」という考えに対し、著者は懐中電灯を例に出して、その考えを否定しています。わずかなバッテリーしか残っていない懐中電灯で暗いトンネルを歩くよりも、十分に充電されている懐中電灯を使うほうがはるかに速く進むことができるというわけです。

ただ、不安症の人に「したくないこと」を尋ねると次々と答えがでてくるのに、「したいこと」を尋ねてもすぐには出てこないと言います。これは次のネガティブな思考パターンとつながってきます。

ネガティブな思考パターン

人間が生まれつき持っている不安は、高い所と大きな音に対するものの2つだけだと言います。つまりそれ以外の不安は学習によって得られたものであり、学習によって得られた不安は学習によって解決できるというわけです。

これはテレビなどでも見たことがありますが、不安傾向の強い人はネガティブなものに注意を向けやすいそうです。それを意識的にポジティブなものに注意を向けるように訓練していくと、自然とポジティブなものに注意を向けやすくなるようです。

注意は認知機能の入り口的な部分ですが、訓練をすることで思考パターンも変えられる、脳細胞の結びつきを再編成できる、というのが本書の核となる部分だと思います。その具体的な方法が「テンセンテンス法」と呼ばれるものです。

簡単に言うと、「あなたにとって本当に素晴らしい人生とはどういうものですか?」という質問の答えを10個(10センテンス)用意して、脳に新たなネットワークを作ることです。楽しいことを思い浮かべ、それを思考パターンに組み込んでいくイメージです。したがって、「〇〇してはいけない」とか「〇〇はしない」といった否定形やネガティブなものはNGです。他にも本書の中で注意点がいくつか書かれていますがここですべては書ききれないので、本書を読んでもらったほうが早いです。

セカンダリーゲイン

日本語では「第二次疾病利得」というらしいです。内容は知っていましたが、この用語を見聞きするのは初めてです。本書の文脈で言うと、パニック発作によって本人も気がついていない利益を得ているということです。

本書では、運転中に長いトンネル抜けるときにパニック発作が起こるという女性のケースが掲載されています。その原因を調べていくと、この女性は姑との仲があまりうまく行っていなかったようで、その姑を訪問するために長いトンネルを抜けなければならなかったことがわかりました。そのトンネルでパニック発作が起きたことによって姑を訪問しなくてよくなったという利益が得られたために、その後、長いトンネルでパニック発作が起こるようになったと言います。

広い意味では、これも自分を守るための警告ですね。

おわりに

本書の「はじめに」では「現在ドイツでは1200万人を超える人々が不安症と診断されており、そのうち200万人は絶えず繰り返すパニック発作で苦しんでいます。」という文から始まります。ドイツの人口が約8300万人ですから、1割を超える人々が不安症ということになります。私は専門家ではないので詳しくはわかりませんが、ドイツと日本は性格的に似ている面があるらしいので、日本でも似たような割合になるのではないかと想像できます。他人事(他国事?)ではないということです。

本書で書かれていることは、心理学や認知科学の知識があればその原理を理解するのは比較的容易であると思います。それほど突飛なことを言っているわけでもありません。ただ、これまで用いられてきた治療法とはかなり異なっているので、なかなか治療法としては広まっていないそうです。

このページでは紹介しませんでしたが、第5章の「困ったときの即効テクニック」では「視覚のずらしテクニック」や「スローモーションテクニック」などちょっとユニークな方法も紹介されています。これらは単なる応急処置ではなく、ちゃんとした効果があるらしいです。

テンセンテンス法も含め、本書で紹介されている方法は大きな副作用などはないでしょうから、一度試して見る価値はあると思います。

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