【あなたの中の異常心理】Part 2 異常心理と幸福

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Part1 自分を知ることで生きやすくなる」の続きです。

本書『あなたの中の異常心理』の「はじめに」では、「異常心理」イコール「精神障害」ではないことが述べられており、さらにこの2つが同一視されていることを問題視しています。

実際に、精神障害ではない人でも、事故や災害などでパニック状態になり通常では考えられない行動を取ることもありますし、過去の歴史を振り返ってみても、凄惨な事件を引き起こしたすべての人たちが精神障害であったと考える人は少ないでしょう。

そもそも正常と異常の境目すら曖昧であり、この本の著者は「正常と異常の区別に意味があるのではなく、むしろ両者の連続性に意味があるのである」としています。

異常というものを私なり解釈すると、ある行動が正常か異常かということではなく、どのような環境下でその行動が行われたのかということと、それを自分や周りの人たちがどのように解釈するのかによって変わってくるということです。ただし、その行動が行われた事自体は生物学的に正常であると思います。つまり、その行動の解釈の結果が正常か異常かに関わらず、それは人間のもつ機能が正常に働いた結果であると私は考えています。

なおす必要があるのだろうか?

異常心理の萌芽は幼い段階にあり、多くの人はそうした傾向があっても成長とともに克服していくといいます。ただし、「強いストレスや葛藤状況におかれると、克服したはずの未熟な心理状態に逆戻りし、バランスを失って、極端な方向に走り始めてしまうということがある。」とも言っています。

おそらく、幼い頃に脳の構造がある程度決まってしまうことや、様々な経験は幼い頃の記憶を土台として積み重ねられていくことが要因だと思います。もしそうだとすると、なおせるのか否かという以前に、なおすべきなのかどうかという疑問が出てきます。なおそうとすることは自分自身を否定することにつながるからです。むしろ、個性として受け入れて、その個性とどのように付き合っていくのかを考えたほうが健全なのではないかと思います。

本書では「なおす」という表現は使っておらず、「克服」という言葉を使っています。もしかしたら、受け入れるべき特徴として捉えているのかもしれません。

幸福とはなにか

さまざまな異常心理の事例が本書では取り上げられていますが、「こうすれば克服できる」というような具体的な解決方法はほとんど出てきません。それはおそらく、行動だけを取り上げて「こうした方がいい」などと安易にいうことはできないからだと思います。

本書の最後の章の終わりの方には「完璧主義や全か無かの二分法的思考は、人を不幸にしてしまう。」とあり、さらに「その人がどれだけ幸福かは、よいことが人より多く起きることではなく、悪いことにも、どれだけ良い点を見つけられるかなのである。」として章を締めくくっています。

最後に、他の書籍になりますが、『パーソナリティ心理学 全体としての人間の理解』という本の最後では以下のように述べられています。

それぞれのレベルの全体を合わせて考えると、1世紀にわたる研究を通して非常に異なるレベルにおいて見いだされた幸福の構成要素には明確な意見の一致がみられる。心理的にうまく機能するために人は以下のことを必要とする。

  • 自分自身を理解し、受容すること
  • 有能性の感覚を持つこと
  • 肯定的、主体能動的で、行動や選択に対して責任がとれること
  • 他者や社会と結びつくこと
  • 適切に自己制御できること
『パーソナリティ心理学 全体としての人間の理解』培風館、2010年
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